現代社会における芸術の価値と責任とは何か。この問いは、私がパンデミックの影響で日本に帰国して以来、

何度も問い直し、自身の経験を通じて日々向き合っている命題です。

日本では、芸術文化が支援されるべきだという考えが広く受け入れられていますが、

時に、支援そのものが目的化し、芸術を手段とした時に、果たすべき本来の目的が忘れられているように思います。

支援された芸術が、社会に何をもたらし、どのように貢献すべきか。その責任が見過ごされることが少なくありません。

 

私たちの団体は、芸術の持つ価値を「教育」「感動」「資産」「対話」という4つの柱に分けて捉えています。

芸術教育は、創造力と問題提起力を育むための最良の手段であり、未来を形作る人材を育てます。

人類の特権とも言える芸術が生み出す感動は、個々の心に深く響き原動力となり、共感を生み、人生を豊かに彩ります。

また、芸術は持続的な価値を提供する資産となり、時を経てそれは、国を形作る歴史的な文化遺産にもなります。

 

しかし、対立や分断が加速する現代社会において、これらの価値の中で最も重要なのは「対話」だと、私は考えます。

芸術は、異なる立場や背景を持つ人々をつなぎ、対話を通じて新たな理解と共感を生み出す力を持っています。

ベルエポック期のサロンや戦国時代の茶室が示しているように、

芸術は今も昔も、異なる立場の人々を結びつける最も強力で普遍的な言語です。

 

国が揺らぐとき、文化芸術は真っ先に規制の対象となることがあります。歴史を振り返ると、

体制が不安定になる時期には、表現の自由が制限され、芸術が抑圧される例が数多く見られます。

この事実こそ、文化芸術が持つ影響力と、その価値を裏付けるものです。

 

芸術は、社会に問いを投げかけ、共感を通して変革の原動力となり、対話と相互理解を生む力を秘めています。

だからこそ、対立や分断を作ることで、世界を支配しようとする権力は、芸術を恐れ、抑え込もうとするのです。

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これから先の未来で、たとえ世界が分断と対立を加速させようとしたとしても、

私たちは、芸術を通じて、分断や対立ではなく、中庸、さらには止揚を導くイニシアチブを取れる人々の集まりとして、

この社団法人を存在させたいと考えています。

代表理事　下地優子